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やぎ座のヒトリゴト

僕の思ったことを書いていきます。雑記ブログです。

「箱庭図書館」を読んだので感想を書く

「箱庭図書館」

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概要

著者:乙一 発行:2013年11月25日

いつかの記事で挙げていた読みたい本の1冊ですね。やっと読みました。どうやら東京にあるらしい架空の町、文善寺町を舞台に6つの物語が描かれます。読者からボツになった原稿を募ってリメイクしていく「オツイチ小説再生工場」という企画から生まれた作品達をまとめた1冊です。書いたのは乙一さん本人なのですが、リメイクの元ネタの作者が全員バラバラなので、どの話もまるで毛色の違ったものになっています。薄暗く妖しい物語からド直球に爽やかな物語まで、「多彩」とかそういう次元じゃない全く別物みたいな物語が1つの町の過去で未来で紡がれています。いろんな人達がそれぞれの物語の隅っこに足跡を残していてちゃんと町が地続きであることを確認できる。それを読む僕らは小さな箱庭を上から眺める誰かなのでしょうか?

感想

読んでる途中にもあれやこれやと浮かんだことはあったのですが、読み終わってみると「素敵なタイトルだなぁ」というのが1番の感想でした。全く違うテイストの物語が同じ町を舞台に所々に足跡を残して進んでいることが、不思議なリアリティと人情味みたいなモノを生み出していて、それらが1冊にまとめられた本に「箱庭」という言葉がとてもしっくりと素敵にハマっている。そう感じました。

それぞれの物語も粒が揃っていました。「失われる物語」で乙一を認識した僕としてはやっぱり「青春絶縁体」と「ホワイト・ステップ」に惹かれます。リメイク元が別にあるとはいえ、素材の引き出し方というか料理の仕方っていうんですかね、元ネタにある切なさとかエグさの描き出し方に乙一さんらしさみたいなモノを感じます。それだけに「王国の旗」や「コンビニ日和!」では中身が違い過ぎて驚かされますよね。から揚げだと思って食べたらフライドポテトだったみたいな。「あれ!?衣の中身が全然違う!!」って(笑) 乙一さんの作品にはなかなか見られないような切り口やキャラクター性が乙一さんの手によって描き直されることで、面白い化学反応が起こっているんだなと思います。企画の面白さや作品の意外性、タイトルの秀逸さも含めて沢山の遊び心がキレイにまとまった1冊だなと思いました。

 

 (最終更新:2018/08/20)